4分で読める 『ちょっといい話』

北海道新聞の切り抜きに、ある中年男性の投書がありました。

終電車の発車間際に切符なしで飛び乗り、車掌さんが回ってきた時に、切符を買おうと財布を出そうとしたが、財布がなかった。

小銭入れもない。どこかで落としたのだろうか。

途方にくれたけれども、そのことを正直に車掌さんに言いました。

「すみません。明日、必ず営業所まで行きますから、今日は乗せてください」

ところが、この車掌さん、よほど虫の居所が悪かったのかどうか、許してくれない。

次の駅で降りろ、と言うのです。

次の駅で降りても家に帰る手段はない。ホームで寝るにしては、北海道の夜は寒すぎる。

どうしようもなくて困っていたら、横に座っていた同じ年格好の中年の男性が回数券をくれたんです。

お礼をしたいからと言って、その男性に名前や住所をたずねたけど、ニコニコ手を振って教えてくれない。

最後は借りたことを忘れて、なぜ教えてくれないのかと文句を言ったら、次のような話をしてくれたんです。

「実は私もあなたと同じ目にあって、そばにいた女子高校生にお金を出してもらったんです。

その子の名前を何とか聞きだそうとしたけど教えてくれない。

「おじさん、それは私のお小遣いだから返してくれなくて結構です。それより、今おじさんがお礼だといって私に返したら、私とおじさんだけの親切のやり取りになってしまいます。

もし、私に返す気持があったら、同じように困った人を見かけたらその人を助けてあげてください。そしたら、私の一つの親切がずっと輪になって北海道中に広がります。

そうするのが、私は一番うれしいんです。

そうするようにって私、父や母にいつも言われてるんです。」

と私に話してくれました。

出典元
「心ゆたかに生きる」林覚乗・西日本新聞社より抜粋転載

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